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お疲れ様です。今回の「Re:」の件で…

お疲れ様です。今回の「Re:」の件で…


グラフペーパー名古屋からのリクエストに対する返信という形で、ものづくりを行う別注企画、“Re:”も早6回目。
ブランドのオンリーショップでありながら他社が母体となるフランチャイズという形態のグラフペーパー名古屋。その店長、バイヤーを務める小久保建とディレクターの南との間で交わされた、次なる往復書簡とは?
付き合いの深い両者による、いまいち噛み合ってないのになぜか時折芯を食う、不思議なやり取りの一部を抜粋! ちなみにRe:と謳っているが、普段の連絡はもっぱら電話とLINEだ。


小久保:僕、この間インフルになっちゃって。そしたら寝込んでるときに南さんの「ハッピバースデー」みたいなストーリーズをいろんな人があげてて、やらかしたなぁって。後から言ったら忘れてた感出ちゃうし。

南:そんな話、しなくていいよ(笑)。

―おふたりがどういう関係値で今回のアイテムができたのかがわかった方が嬉しいので、そのまま好きにしゃべってもらってて大丈夫です(笑)。

南:俺に「『それはダメ』って言われたりしてます」とかね。

小久保:(笑)。まぁ、バイヤーとしては「ダメ」って言われるのも珍しいですけどね

南:嫌なものは嫌だもん。

小久保:普通の別注って、ショップ側が「こういうのをつくってほしいです!」と言ったらブランドもそれに応えます、みたいなものも少なくないんですけど、南さんの場合は大体一回ダメ出し食うんですよ。「これはどうですか?」、「いや、それもダメ」みたいな。そんなキャッチボールをしてるんですけど、最初は大半「ダメ」ですね。

南:そんなことないけどさ(笑)。そもそも今までにあったものの生地を変えたり、同じアイテムだけど違うアイデアでまたやってみるとか、そういうことをRe:としてやりたいって、昔提案してたよね。

小久保:そうです。

南:苦し紛れのコンセプト?

小久保:いやいや!(笑) 僕ら、もう10年近いお付き合いですけど、始まった頃は忘れもしない、僕の30歳の誕生日のことで…。


―何か始まりましたね。

南:始まったね。

小久保:その30歳の誕生日を南さんが祝ってくれたんですよ!

南:いや、それもただ飲んでて、「次にいつものスナック行こう」となってさ、その移動のタクシーの中で「僕、そういえば今日誕生日で…」みたいなこといきなり言うからさ。そんなメモリアルな日をスナックで祝ってる俺も相当ダサくなっちゃうじゃんって(笑)。

小久保:大事な夜を…ともに過ごしましたね…。

南:何ワケわかんないこと言ってんだよ(笑)。

小久保:…とまぁ、ずっとこういう間柄なんですけど、このRe:のコンセプトを最初に提案したときに、「お、ちょっとは成長したじゃん」って南さんに言われたのがすごい嬉しかったんですよ、僕は。たまーーに褒めてくれる(笑)。

南:どうせロクでもないこと、話してくるんだろうなって思って聞いてるからね。

―ヒドいこと言いますね。

南:俺、手段しか出てこない話とかがすごい嫌いでさ。「ちょっとアメカジ的な感じで…」とか言われたりすると、「知らねぇよ! それならアメカジのブランドに別注しろよ!」とかって思っちゃうタイプだから。それよりもなぜやるのかっていう大義名分というか、コンセプトがやっぱ大事だと思ってるから。でも、そのときは小久保には珍しくちゃんと大元の部分から来たなって。

小久保:そうっすね。

南:「名古屋の人たちはあのときのアレが好きで〜」とか言ってくんのかなって思ってたから。

―ヒドい。

小久保:(笑)。やっぱり復刻するだけじゃ、自分もおもしろくなかったんで。自分としてもこんなに距離が近いブランドは珍しいですし、通る通らないは別にしても「こういうの、どうですか?」と言えちゃう。そこは普通の別注と、やっぱり違いますよね。

―小久保さんはグラフペーパー名古屋の店長っていう肩書きだと思うんですけど、ちょっと不思議な距離感ですよね。

小久保:うん、そうですよね。

南:元々はジャック イン ザ ボックスっていう名古屋のお店で、卸先としてグラフペーパーを扱ってもらっていて、イベントもやってもらったりしてて。小久保はそこのスタッフだったんだよ。

小久保:南さんとお会いしたのもそこでですもんね。

南:で、その中でグラフペーパーのポップアップストアをやるとなったときに、「特別なものがほしいよね」っていう話になって。「でも、一過性のものだとつまらないから、ウチだけでの別注ラインというか、コンセプトに基づいたシリーズとしてやりたいです」って言われて「じゃあ、具体的にはどんなことやりたいの?」みたいな話をしたところから、さっきの流れになった。

小久保:10年かかりましたね。

南:だからジャック時代からの流れで、それからフランチャイズっていう形でグラフペーパー名古屋ができて、オーナーはジャックと同じ会社だから小久保もグラフペーパーのお店に立ってもらうようになったけど、「やっぱりRe:はやりたい」っていう話になったんだよね。

小久保:今回のRe:は2年ぶりですね。元々Re:は喜んでくれてるお客さんも多くて、他府県から来たお客さんに「Re:はもうやらないんですか?」って言われたりしてたんです。僕らがグラフペーパーや南さんとの距離感がすごく近かったのもあったから、名古屋限定品というか、そういうものがあったらみんな喜んでくれると思ったんですよね。

―いい話ですね。

小久保:それで、Re:で新しいコンセプトを考えたときに褒められた記憶があったんで、また南さんを驚かせてやろうと思っていくつか提案したんです。そしたら「メンドくせぇ! 結局Re:が一番いいわ」って言われて。

―いい話じゃなくなりましたね。

南:(笑)。

小久保:でも、やっぱり自分でもRe:が一番いいと思ったんですよ。そこから続いていって、今回で6回目ですね。


―今回のアイテムはどんな内容なんですか?

小久保:これは僕の超個人的な話なんですけど、シャンブレー生地でやりたいっていう気持ちがずっとあったんですよ。自分がファッションの世界に入ったのが15年くらい前で、その頃は今とはまた違ってアメカジ全盛期だったじゃないですか。当時シャンブレーを着てる人って、やっぱりすごくファッショナブルで格好良かったんですよ。その印象へのあこがれがずっと自分の中にあって、シャンブレー=オシャレで格好いい人が着ているものっていうイメージがいまだに強くて。

南:グラフペーパーはシャンブレー、あんまりやらないからね。

小久保:ですよね。ただ、シャンブレーって着る人によって結構ガラッと印象が変わっちゃうなとも思ってて。昔だとギャルも着てたりしましたし。

―ウェスタンな感じのギャル、いましたよね。

小久保:そうそう。あとはガチなアメカジのおじさんももちろん着ますし。そういう、着る人で全然違うところもおもしろくて。そもそもグラフペーパー名古屋がある場所が大須っていう下町の始まりみたいなエリアになるんですけど、めちゃくちゃ色んなタイプの人がいるんですよ。それこそ、おじいちゃんおばあちゃんから…

南:秋葉原と高円寺が混ざったような街だよね。あとは一部ブラジル。

―ダイバーシティってやつですね。

小久保:昔からの呉服屋もあれば食べ歩きする出店みたいなものもいっぱいあるし、南さんが好きなオーディオの店もあれば、それこそブラジル人がやってる店とかだと何だかわからない店もめちゃくちゃある。今、色んなとこで言われるインバウンドみたいなことじゃなく、本当に色んな人がいる大須だから、誰が着るかで印象が全然違って見えるシャンブレーはこのエリアっぽいのかなって。

―人間交差点みたいな街なんですね。

小久保:そうです。最初は「シャンブレー、好きっすね」しか言えなかったけど、一応構築してきました。

南:(笑)。最初は、俺、ただのシャンブレーは嫌なんだよなと思ってて。この生地はグラフペーパーの23SSで使ったやつなんだけど、確か素材がスーピマコットンだったかな。

小久保:当時は濃い色と薄い色、2色でそれぞれシャツをつくってましたよね。

南:うん。これはかなり細番手だからちょっと光沢があるし、こういう上品なシャンブレー生地でワークっぽいものじゃなく、逆に普通のシャツにしてみたらどうなるかなって。ワークとかアメカジに寄せすぎないのもうちっぽいかなと思ったし、それがRe:になってたらおもしろそうだな…とか考えながらアップデートしたんだよね。

小久保:23SSのはもうちょっとズバでダンガリーシャツっぽいポケットだったりしたから、よりワケわかんないバランスになって、それがいいなって。

南:だから本当にいつも通りで、ドレスの縫製仕様でカジュアルな形っていうバランス。

小久保:ポケットのネームは、僕が元々ストリートブランドのこういうアプローチが好きだったんで、付けてほしくてお願いしました。

―シャンブレーシャツをやりたいと伝えて、南さんからは「これならOK」みたいなレスポンスだったんですか?

小久保:でも、流れですね。いつも「それでいいよ」みたいなことは特にないんです。「オッケー」とは言われない。「(その内容で)生産チームに投げてみる」って言われたら、それは行けたっていうこと。ダメなときは基本、「ダメ」って言われるんで。響いてないときは、ホント響かない。

南:「これどうですか?」、「そう言えばさぁ」みたいな(笑)。

小久保:無かったことになってる(笑)。だからこのシャンブレーシャツができたのはめちゃくちゃ嬉しかったですね。グラフペーパーでは1番人気なんじゃないかっていう定番のオーバーサイズのブロードシャツの形で、自分が思い入れのある生地が使えたから。自分でも早く着たいなと思ってる、完全に俺得案件です。


―このシャツが襟の形の違いで2種類と、あとはセットアップですよね。

南:これはコットンのタイプライタークロスでつくってるウチのブランドのユニフォームみたいなセットアップがあるんだけど、それを定番でつくってるジャケットの生地でつくり変えたっていう流れ。元もからあるもの同士を組み合わせて、あべこべに。

小久保:これも、元は僕が短パンが欲しくて。シャンブレーシャツにさらっと短パンを合わせてる感じが好きなんです。

南:ハーフパンツはグラフペーパーでもすでにあるけど、スケールオフウールっていうこの生地はシェフパンツしかなくて。それで、その生地でハーフパンツをつくってみようっていう流れだったよね?

小久保:そうですね。ウールなのにチクチクしなくて自分も好きな生地で。最初は短パンだけだったんですけど、「それだと寂しいからシャツもつくろう」と。

南:「ショーツが欲しいです!」って言われても、ただ言われた通りにやるのも嫌だから。「これならどう?」みたいなことで。

小久保:形もだいぶ変わりましたね。

南:ちょっと悔しいんだけど、今回この生地でセットアップ用にシャツをつくってみたら、生地にハリがあるから肩の形成がきれいに取れて、格好良くてさ。小久保ムカつくなぁって。

小久保:へへ。でしょ?

南:いや、考えたのは俺だけどね(笑)。でも、俺だけだったらこういう厚手の生地でシャツ型はつくらなかったから。サンプルが上がってきたとき、これがRe:だってことを忘れてて「いいじゃん!」ってなっちゃって。

小久保:夏が暑すぎるから短パン穿きたいけど、あんまりカジュアルすぎたり、イージー仕様で流行り物っぽすぎたりしてもなぁ、みたいな気持ちがずっとあったんで。嬉しかったですね。


―今までのRe:も、こういう掛け合いの中からできていったんですか?

小久保:はい。僕がホントに暴走したやつもありましたけど、コロナ禍の時期にこのRe:が始まって、そのとき南さんと僕とでインスタライブをやったりしたんですよ。その中で観ていたお客さんから「スウェットやってほしいです!」みたいなコメントがあって、それを話の中で拾ったりしたんですけど、それを次のRe:で本当につくったこともありました。南さんも結構乗り気で。「あれ、可愛かったよな」とか言ってました。

南:意図が伝わってるんだなと思ってさ。

小久保:あれは確か、コメントしてくれたのが実は女の子だったんですよ。その子が本当に買いに来てくれたりして。

―Re:はすごい民主的な企画ですね。いつも南さんに聞いても「グラフペーパーは俺が好きなものをつくってるだけ」としか言ってくれませんけど。

南:ジャック時代のポップアップだと俺が自分で店頭に立ったりもしてたからね。そのときに何本も同じパンツを買ってくれてるっていう人が話しかけてくれて、お礼を言ったんだけど、「穿き込みすぎて股の部分が擦れて破れちゃうから、何度も買い直してるんです!」って言うのよ。その人が。俺、その場で生産チーム全員にLINEして、「この部分が穿いてるうちに破れるらしいから、明日中に全員で生地から見直しだ!」って言ったの覚えてるもん。

小久保:そういう貴重な意見を本当にちゃんと吸い上げてもらえるんで、Re:に関しても僕は企画はしてるけど、「自分が考えて実現しました!」みたいな感覚は全然なくて。自分も含めて、グラフペーパーが好きなみんなの声を形にしたいなと思ってます。ポップアップでもそうやって謳ったらいいんじゃないですか? 「話、聞きます」みたいな。

南:すごい文句言われて怒られたりしそう。名古屋のお店は変わってるお客さん多そうだし。

小久保:オープンして最初のお客さんも、朝イチのおばあちゃんの集団でしたしね。前に店内で急に尺八演奏し出したおじいさんとかはいましたね。店中に響き渡ってたな…。

南:何それ! 超見たかった。教えろよ! そのときに。

小久保:(笑)。でも、名古屋のお店は本当にそういう感じです。お客さんもフランクに「おもしろいね!」、「いいね!」って楽しんでくれるし、スタッフとか身内もそう。そういう関係性とか、ブランドと距離が近い感じが、いいのかなって。

南:お前の彼女も距離感近いよね。


小久保:そうですね。僕がたまたま出張のときに南さんから「今名古屋なんだけど夜空いてる?」って連絡が来て、「今、僕が東京なんですよ…」って言ったら、なぜか彼女が南さんと飲みに行って、日帰りの僕を待つことになって。初対面なのに。カオスです。

南:待ってたらお前も来るっていうからさ。「おやび〜ん!」って、めっちゃ声が高いのよ。小久保の彼女さん。

小久保:気づいたらあの子は南さんを“オヤビン”って呼んでますね。…要ります? この話(笑)。


■発売日
4月26日(土) 12:00~
※Graphpaper NAGOYA店頭 /
Graphpaper NAGOYA WEB STORE同時発売


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